弔事の熨斗紙の選び方について
はじめに
一般的な贈り物の熨斗紙に対し、弔事の熨斗紙はより一層気をつける必要があります。やはり「弔事」という状況なので、間違えることは大変失礼。しかし、いざ準備しようとすると「そもそもどの熨斗紙が最適なの？」「宗教ごとに何が違うの？」といった疑問も浮かびますよね。
弔事の熨斗紙には宗教や宗派によって明確な違いがあり、適切な選び方をしないと意図せず相手を不愉快にしてしまう可能性があります。特に熨斗紙の有無や水引の種類、表書きの違いを知らないと、誤ったものを使ってしまうことも。
本ページではそれらの疑問を解消し、迷わず正しい熨斗紙を選べるよう詳しくご案内します。
弔事の熨斗紙の基本ルール
熨斗紙は「熨斗なし」が基本
まず覚えておきたいのは、弔事では慶事とは異なり、熨斗（のし）が付いた熨斗紙は使用しません。
熨斗は「祝意を表す飾り」のため、弔事に適さないからです。そのため、熨斗なしの「掛け紙」や「水引付きの包み紙」が一般的に使用されます。
水引の種類
弔事の水引には地域や宗派による違いもあり、全国的に統一されているわけではありません。特に仏式、神道、キリスト教では使用する水引が異なり、誤った選択をするとマナー違反になることも。
贈る相手の宗教や地域の風習を事前に確認し、適切な水引を選ぶことが大切です。
なお、迷った場合や確認が難しい場合には、表書きを「御霊前」とし、「熨斗無し 藍銀結切り」を選びましょう。こちらは宗教問わず共通で利用することができます。
| 水引の種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 黒白、藍銀の結切り | 主に仏教用の通夜、法要時、葬儀告別式に使用 |
| 黄銀の結切り | 主に神道、キリスト教の通夜、法要時、葬儀告別式 |
| 藍銀の結切り | 宗教を問わず使える、通夜、法要時、葬儀告別式 |
| 赤金、紅白の花結び | 主に仏教のお祝い事や謝礼として。お坊様へのお礼やお寺へのお祝い、納骨堂や仏壇購入時のお祝いなど |
表書きの種類
表書きは故人の宗教や弔事のタイミングによって異なります。
故人や遺族の信仰する宗教に応じて適切な表書きを選ぶように心がけましょう。
仏式では「御霊前」「御仏前」などが一般的ですが、浄土真宗では四十九日以前でも「御仏前」を使用する点に注意。
神道では「香典」という表現を避け、「御玉串料」や「御神前」などを使用し、キリスト教では「御花料」「忌慰料」などの表書きを用います。
地域によっても慣習が異なるため、事前に確認できれば安心ですね。
| 宗教・宗派 | 表書きの種類 | 使用タイミング | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 仏式（一般） | 御霊前 | 四十九日まで | 浄土真宗を除く |
| 仏式（一般） | 御仏前 | 四十九日以降 | 四十九日後は「御仏前」が正式 |
| 仏式（浄土真宗） | 御仏前 | 四十九日前でも使用 | 浄土真宗は霊の概念がないため「御霊前」は使用しない |
| 仏式（一般） | 御香典 | 通夜・葬儀・法要 | 比較的広く使われるが、宗派により使い分けが必要 |
| 神道 | 御玉串料 | 葬儀・法要 | 香典という表現は使わない |
| 神道 | 御神前 | 通夜・葬儀・法要 | 神道特有の表書き |
| 神道 | 御榊料 | 葬儀・法要 | 「玉串料」との使い分けは地域や神社による |
| キリスト教（カトリック・プロテスタント） | 御花料 | 葬儀・法要 | 水引なしの白封筒に記載 |
| キリスト教（カトリック） | 献花料 | 葬儀・法要 | 教会への寄付を意味することが多い |
| キリスト教（プロテスタント） | 忌慰料 | 葬儀・法要 | プロテスタントで使用されることがある |
こちらも迷った場合や確認が難しい場合には、表書きを「御霊前」とし、「熨斗無し 藍銀結切り」を選べば無難です。
弔事の熨斗紙の書き方
熨斗紙の表書きや名入れは、できる限り相手方の宗教や宗派を尊重し、形式に則って書くことが理想的です。特に弔事は適切な表書きを選ばないと、相手に不快感を与える場合もあります。
表書きの書き方
- 毛筆または筆ペンを使用する
- ボールペンや万年筆はNG（弔事では薄墨が適切）
- 表書きは中央に大きく書く
薄墨を使用する理由として、涙や悲しみで墨が薄まったことを表します。元々は、弔事の際に遺族が涙を流しながら墨をすったため、濃い墨ではなく薄墨になったという由来も。また、弔事では「悲しみの色」を表現する意味合いもあり、深い哀悼の意を示すためによく使用されます。
名入れの書き方
| 贈り主の形態 | 書き方の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 個人 | フルネーム（例：田中 太郎） | 苗字のみや略称は避け、正式な名前を記載 |
| 夫婦連名 | 夫のフルネーム（左側に妻の名前） | 夫の名前を右に、妻の名前を左に書く |
| 法人・団体 | 企業名＋代表者名（例：株式会社○○ 代表取締役 田中 太郎） | 法人の場合は企業名を明記し、代表者名を記載 |
| 複数人で贈る場合 | 「○○一同」などまとめて記載 | 全員の名前を書く場合は代表者名を中央に書き、左側に他の名前を記載 |
熨斗紙の貼り方・渡し方のマナー
熨斗紙の貼り方
弔事では熨斗紙の貼り方も重要です。
熨斗紙の貼り方には、手渡しする場合と郵送する場合で異なるマナーがあります。
一般的に、弔事では包装の外側に貼る「外熨斗」を使用するのが一般的ですが、郵送する際には包装の内側に熨斗紙を入れる「内熨斗」が適切とされています。これは、手渡しの場合は故人への敬意を表しやすく、郵送の場合は配送時の汚れを防ぐための配慮です。地域や宗派によって異なる場合があるため、事前に確認するとよいでしょう。
手渡しと郵送、どちらが丁寧ということはなく、ライフスタイルに沿って選べば問題ありません。
それぞれに適したマナーを守ることで、故人や遺族に対する敬意を示すことができます。
- 手渡しの場合：外熨斗（掛け紙を外側につける）
- 郵送の場合：内熨斗（掛け紙を包装の内側につける）
手渡しの場合は外熨斗、郵送する場合は内熨斗が望ましい
まとめ
弔事の熨斗紙は、熨斗なし・結切りが基本です。宗教ごとに適した水引や表書きがあるため、事前に確認することができれば尚良しです。
もし迷った場合は「熨斗無し 藍銀結切り」を選べば大きな間違いはなく無難です。
